後遺障害の等級認定

4G2A2900交通事故の損害賠償金額は、後遺障害の等級によって、大きく変わります。そのため、事故直後の早い段階から、専門家に相談し、適切な認定を受けるために、準備することがとても大切です。

ここで、後遺障害の適切な等級認定を受けるためのポイントを順追って説明します。

事故は警察で「人身事故」として処理してもらうこと。

加害者から、刑事処分や行政処分を回避するために、「物損事故」として処理してほしいと頼まれることがあります。しかし、事故当初は、どのような後遺障害が発生するか分からないことが通常です、また当初は事故態様に全く争いがないようでも、後日なんらかの事情で争われた場合、人身事故として事故証明書が入手できなかったり、刑事記録として作成される実況見分調書が作成されないということになります。このような場合、当然後遺障害の立証に苦労することになります。

② 治療にあたっての注意点

・医師に自覚症状をしっかり伝えること
・適切な検査・治療を受けること
・自覚症状、検査結果・治療経過をしっかりとカルテに記載してもらうこと
・外科または整形外科への通院を継続すること

後遺障害の等級認定は、1次的には、自賠責保険の損害保険料率算出機構という認定機関が判断しますが、認定にあたっては、症状固定時(治療をつづけてもそれ以上に症状の改善が望めない状態に達したとき)の状態のみで判断されるわけではありません。特にむち打ち症などでは、事故直後の症状、それに対する医師の診断、その後の治療経過などを基に判断されます。

従って、治療を受けるにあたっては、医師にしっかりと自覚症状を伝え、それをカルテに記載してもらうことが大切です(1回の受診毎にカルテのコピーをもらって内容を確認することが望ましいです)。また効果のない治療を続けていると、まだ治癒の可能性があるにもかかわらず、症状固定とされてしまう可能性がありますので、あまり効果がなさそうであれば、治療方法の変更など検討してもらうことが必要です。

交通事故による負傷の場合は、単に「治療」が優秀な医師というだけでなく、自覚症状をカルテにしっかり記載してくれる、しっかり検査をしてくれる、適切な治療方法をいろいろと検討してくれる医師を選ぶことが大切です。

そうは言っても、医師は患者の治療が最たる目的ですので、後遺障害の等級認定までは理解の及ばない医師も少なくありません。そのような場合には、当事務所の弁護士が、後遺障害認定のことを考慮に入れた必要な検査・証拠収集などについて、アドバイスしますので、それをもって受診されている医師に頼んでください。もし、それでも医師に理解してもらえないようであれば、医師を変更することをお勧めします。

なお、受診治療は、外科や整形外科で行う必要があり、通院を継続する必要があります。週に3~4回通院することが望ましいです。間隔が空きすぎると慰謝料や後遺障害認定にあたり不利になる場合があります。 また十分な通院実績がないと、保険会社から治療費打ち切りの口実とされます。 整骨院や接骨院のみの通院では、治療費、休業損害、通院慰謝料で不利に判断されます。

③ 症状固定の時期は医師と十分に相談して決定すること

症状固定とは、治療を続けてもこれ以上症状の改善が望めない状態になったときをいいます。

症状固定となると、その後は治療費を請求できなくなります。

半年(場合よってはそれ以前でも)も通院すると、まだ治療は終わっていないのに、保険会社から、「症状固定ではないですか、今後は治療費の支払いはできせん」と治療費支払いの打ち切りの打診が被害者にあることがあります。また症状固定の時期は医師が診断するものですが、保険会社は、被害者が受診している医師に電話や書面、直接面談で問い合わせたりすることで治療経過や症状の経緯について定期的に確認しており、保険会社がこれ以上治療を続けても症状の改善は望めない状態であると判断すれば、医師に対し症状固定や治療費の支払いの打ち切りを打診する場合があり、交通事故に理解のない医師であれば、それに簡単に応じてしまう場合もあります。もちろん、その判断が正しい場合もありますが、やはり、保険会社としては、なるべく早く解決したい、保険金の支払を少なくしたいという思惑から、治療費の打切りや 早期の症状固定に持ち込もうとする場合があります。

したがって、交通事故被害者は、症状固定の判断を保険会社や医師に任せっきりにするのではなく、自分自身で傷病の状態、後遺障害の内容、治療・症状の経過を理解して、他にも治療方法がないか医師と十分相談のうえで症状固定時期を決めるべきです(その意味でも交通事故の処理に理解のある医師を選択すべきです)。治療中の注意事項でも述べましたが、受診日毎のカルテを記載のコピーをもらっておくこと、治療方法やその効果についてよく医師とコミュニケーションを図っておくことはここでも役に立ちます。なお、保険会社から一方的に治療費の支払いの打ち切られても、医師と相談のうえ症状改善の余地があると判断する場合には、通院をやめてはいけません。治療費の打ち切りがあった場合には、健康保険で通院してください。その際は、領収書と診療・治療明細書をもらい保管しておいてください。健康保険であっても、医師の診断のもと治療を継続すれば、後日、その分の治療費と休業損害を請求することができる場合が多くあります。

④ 適切な後遺障害診断書を作成してもらう

後遺障害の等級認定は、医師から症状固定と判断された後に「後遺障害診断書」を作成してもらい、損害保険料率算出機構の調査事務所に申請して等級認定が行われます。

後遺障害の等級認定は、後遺障害診断書をはじめとする書類での審査がほとんどであるため、医師に作成してもらう後遺障害診断書が極めて重要になります。この後遺障害診断書の内容次第で、適正な等級認定を得ることができるかどうかが決まりますので、後遺障害診断書は、できる限り具体的に、かつ細かな点まで自身の症状について伝え、記載してもらうことが重要です。

後遺障害等級認定を踏まえて、どのような検査を受けておくべきか、後遺障害診断書をどのように作成してもらうか、については、できるだけ早いタイミングで専門家にアドバイスを受けられることをお勧めします。

⑤ 後遺障害の等級認定申請は「被害者請求」を行う

後遺障害の等級認定の手続きには、加害者の任意保険会社が、自賠責保険会社に依頼して、後遺障害認定の申請を行う「事前認定」と、被害者自ら、自賠責保険会社に対して直接、後遺障害診断書などの資料を提出して行う「被害者請求」があります。


加害者が任意保険に加入している場合、任意保険会社による一括払い(任意保険会社が、自賠責保険分を含めて損害賠償額全体について、被害者に支払ったうえで、その後、自賠責保険金相当額を自賠責保険会社に請求するという手続)が行われるのが通常ですので、後遺障害認定の手続きも被害者が何もしなければ、任意保険会社による「事前認定」が行われます。


「事前認定」は、被害者にとって手間がかかないというメリットがありますが、任意保険会社がどのような資料を提出しているか確認できませんし、後遺障害の等級認定につき、否定的な資料を添付して後遺障害認定の申請を行う可能性があるというデメリットがあります。


これに対し、「被害者請求」の場合は、多数の書面を作成したり、レントゲン写真やCT、MRIといった画像を収集提出するなど、煩雑な作業をする必要があります。また任意保険会社の「一括払い」のサービスを解除することになりますので、自賠責保険に対する被害者請求の時効消滅に留意する必要がでてきます。しかし、「被害者請求」の場合、所定の提出必要書類のほかに、被害者に有利な証拠や補足資料を添付するなど、提出する資料をコントロールできますし、任意保険会社が否定的な資料を添付して後遺障害認定の申請を行うことを避けることができるといメリットがあります。また、認定されると自賠責保険分
の保険金を示談や裁判結果を待たずに早期に受け取れるメリットがあります。


したがって、当事務所では、受任した事件は、後遺障害の内容程度が明らかな場合や画像所見などから認定結果に違いが生じる可能性は少ない場合を除き、「被害者請求」を行うことを原則としています。


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