解雇

「勤務態度の悪い社員を辞めさせたいが、どのようにして辞めさせればいいかがわからない」
「電車内で痴漢をした従業員を懲戒解雇にしたい」
「赤字続きなので、従業員の何人かを解雇したい」
「解雇をした従業員から突然訴えられてしまった」
「労働基準署から突然連絡が入り、警告を受けてしまった」

photo3233解雇とは使用者からの労働契約の解消のことですが、原則として労働者を解雇するのは難しいという事実があります。仕事があまりにできない社員や勤務態度が極端に悪い社員であっても、簡単に解雇をすることはできません。

安易に解雇をしてしまうと、従業員から訴えられ、解雇が無効とされ、未払給料や慰謝料などの支払義務を負ったり、社会的な注目を集めるなどして、会社が有形無形の不利益を被る危険があります。

解雇は、使用者からの一方的な意思表示による労働契約の解消ですので、あらかじめ就業規則と労働契約書(労働条件通知書)に、どんなときに解雇されるのか(解雇事由)が明記されており、

その要件に該当することが必要です。そして、使用者は30日前に労働者に通告することが必要です。

更に、労働契約法上「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効とする」とされています。これは従来からの判例法理を明文化したものです。従って、単に就業規則に形式上合致するからというだけで解雇できるものではなく、客観的に合理的な理由があり社会通念上相当であると認められないと解雇はできないということになります。

客観的に合理的な理由の例としては、①傷病等による労働能力の喪失や低下②能力不足や適格性の欠如③非違行為④使用者の業績悪化等の経営上の理由⑤ユニオンショップ協定による解雇等があります。社会通念上相当であるかどうかの判断は、その事実関係の下で労働者を解雇することが過酷に過ぎないか等が考慮されます。ただし、客観的合理性があるかどうか、社会通念上相当であるかどうかの判断は、いずれも具体的な個々のケースに応じて判断されるものであり、慎重な判断が求められます。裁判で解雇の有効性が争われた場合、当該事案における具体的な事情や企業規模(配置転換が可能か否か)、解雇に至る経緯なども細かく検討したうえで判断されます。

解雇には、普通解雇・整理解雇・懲戒解雇の3種類があります。

「普通解雇」とは、整理解雇、懲戒解雇以外で、就業規則に定めのある解雇事由に相当する事実があって行われる解雇をいいますが、労働契約の継続が困難な事情があるときに限られます。

例えば、次のような場合、普通解雇の対象となります。

・勤務成績が著しく悪く、注意指導を何度も繰り返したり、仕事内容の変更も試みたが、改善の見込みがないとき

・健康上の理由で、長期にわたり職場復帰が見込めないとき

・著しく協調性に欠けるため業務に支障を生じさせ、配置転換などを試みたが、改善の余地がないとき

「整理解雇」とは、会社の経営悪化により、人員整理を行うための解雇をいいますが、次の4要件をいずれも満たすことが必要です。

・整理解雇をすることに客観的な必要があること
・解雇を回避するために最大限の努力を行ったこと
・解雇の対象となる人選の基準、運用が合理的に行われていること
・労使間で十分に協議を行ったこと

「懲戒解雇」とは、従業員が極めて悪質な規律違反や非行を行ったときに懲戒処分として行うための解雇であり、就業規則や労働契約書にその要件を具体的に明示しておく必要があります。更に、懲戒解雇は、懲戒処分のひとつですので、同種の非違行為に対しては、懲戒処分は同等でなければならない(平等扱いの原則)・非違行為の程度に照らして相当なものでなければならない(相当性の原則)といった懲戒処分におけるルールにも注意しなければなりません。

このように、一口に解雇といっても、その解雇の種類に応じて、様々な手続きや客観的合理性・社会的相当性の判断が必要となりますから、解雇を実施する場合には、慎重な検討と周到な準備を要します。

弁護士に依頼することで、解雇事由に客観的合理性が認められるか、その解雇は社会通念上相当と言えるかどうか、手続きに漏れはないか等についてアドバイスを受けることができます。弁護士の適切なアドバイスに従って解雇手続きを進めることにより、解雇後元従業員から解雇無効の訴えなどの裁判リスクを大幅に減少させることができます。万が一訴えられてしまった場合にも、裁判を有利に進めていくことが可能となります。お気軽にご相談ください。


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