むちうち(鞭打ち)について

むちうち(鞭打ち)、むち症とは

photo2906むちうち(鞭打ち)、むち打ち症と呼ばれるものは、自動車の追突、衝突、急停車等によって首が鞭(むち)のようにしなったために起こる症状を総称したものです。

正式な傷病名としては、「頸椎捻挫」「頸部挫傷」「外傷性頸部症候群」などと呼ばれます。主な症状としては、首の痛み、手のしびれなどがありますが、そのほかにも、頭痛やめまい、倦怠感など、様々な症状が現れる場合があります。

主な傷病名とその症状は次のものがあります。

頚椎捻挫型(主に頚部周辺の軟部組織の炎症に止まるもの)、神経根症型(神経根に障害を残し、頚部痛・運動制限のほか、肩から手指にかけて重さ感・だるさ感・痛み・痺れなどの症状を伴う)、バレ・リュー型(交感神経の損傷を原因とする自律神経失調症状を伴う)、脊髄症型(脊髄が圧迫され、痺れ・麻痺・こわばりなどの症状を伴う)がありますが、これらの混合型もあります。

むちうち症の症状固定時期

症状固定の時期は、症状の程度・医師の判断等によって様々ですが、後遺障害等級の認定を考えるのであれば、交通事故の発生から6か月以上の治療期間が必要となります。 

むちうち症の等級認定について

むちうちによる痛みや痺れを訴えても、「そのうち治る」と言われてしまうこともよくあり、「むちうち」は後遺障害にならないと思い込まれている方もおられます。しかし、先ほど述べましたとおり、むちうちには様々なタイプがあり頸椎捻転や軽い頸椎捻挫型では、2、3か月で治癒する場合も多くみられますが、椎間孔から出ている神経が圧迫されたり伸ばされることでおこる神経根症型や事故の衝撃により、交感神経を痛めることで引き起こされるバレ・リュー型などでは往々にして後遺障害が残るケースが多くあります。交通事故での全部の後遺障害認定の中で最も多く、半分以上を占めているのは、むちうちのケースなのです。

但し、むちうちであれば、必ず後遺障害が認められる訳ではなく、下記の表が認定の基準となります。

等級

労働能力喪失率

労働能力喪失期間

認定基準

12級13号

14%

5~10年

局部に頑固な神経症状を残すもの

14級9号

5%

5年以下

局部に神経症状を残すもの

後遺障害の等級として認定されるかされない(非該当)かは、将来においても回復が困難と見込まれる障害といえるかどうかの判断となります。損害保険料率算出機構の調査事務では、画像、事故態様、症状経過、治療状況、症状固定時の症状の程度等様々な点が総合的に考慮し判断します。症状固定の時点で痛み等が残っていても非該当とされる例が多くみられます。

「12級13号」と認定されるか「14級9号」と認定されるかで損害賠償額にも大きな差が出てきますが、その区別は、その神経症状が「頑固」かどうかということになります。「頑固」かどうかとは程度問題のようで判りにくいですが、実際の認定にあたっては、「画像所見があるかないか」という違いが、14級9号か12級13号かの認定判断に大きく関係しています。なお、この画像は、レントゲンでは分かりませんのでMRIを撮る必要があります。

例えば、むちうちの代表的な症状として、手に痺れを感じることがあります。これが後遺障害として認定されるためには、「痺れを感じるという自覚症状」と「痺れのある部位と関連する神経に異常がある」ということが医学的に説明できなければなりません。それがまったく説明できなければ、非該当ということになってしまうことがあります。また一応の説明ができたとした場合、さらにそれが、

「頑固」な痺れ(12級13号)と認められるためには、画像(MRI)でも判るほどの異常があると証明する必要があります。

受診する場合の留意点

このように、むちうちが後遺障害として認定されるかどうかは、病院での検査内容がきわめて重要であり、各種神経学的所見(腱反射・徒手筋力テスト・握力等)のほか、患者や検査者で左右できない検査結果である画像(MRI)などが重要となってきます。

しかし、病院や医師によっては、MRIの検査をしないために(MRIは設置されている病院も限られ、その場合は外部の検査施設を利用することになりますが、中にはそれを面倒がる医師もいるようです。)、神経症状を確認できないことがあります。

逆に、交通事故によるむちうち症の後遺障害に精通した医師であれば、適切な検査や治療を受けることが出来、適切な診断書を作成してもらえることが期待できます。

交通事故によって負傷した場合、その傷病の治療に専念することが第一ではありますが、適切な後遺障害の認定を受けるという観点から、受診する際に留意しておくべきポイントを以下あげておきます。

必ず医師(外科、整形外科)の診断・検査・治療を受け、通院を継続すること。

医師以外の整骨院や針灸等などへの通院だけでは、後遺障害として認められる症状を証明することはほぼ不可能であり、またその他損害賠償を請求するうえで不利です。通院回数が少なかったり、間隔が空きすぎると症状が軽いと判断されてしまう可能性があります。週3、4回は通院することが望まれます。

医師に自覚症状を正確に伝えること

むちうちが後遺障害として認定されるためには、①自覚症状が継続的に確認され、②その自覚症状と他覚所見(画像や各種神経検査による異常所見)が一致していることが重要となります。

ですので、まずは自覚症状を継続的にしっかり医師に伝えて、かつ、受診毎のカルテや診断書に記載してもらう必要があります。

MRIによる画像撮影をすること

MRIによる画像所見で異常所見が見られるかどうかが後遺障害の認定のうえでとても重要です。レントゲン画像では、むちうち症状の原因となる何らかの異常があるかないかを判断することは難しいと言われていますので、通院する病院にMRIがない場合には、MRIがある病院や検査センターへ紹介してもらい、MRIの撮影をしてください。なお、MRIも機器により画像性能に差があるようですので、できるだけ最新機器による撮影が望ましいでしょう。

神経学的テストを受けること

後遺障害の認定においては、神経学的テストの検査結果、異常所見が見られることが必須です。神経学的テストには、ジャクソンテスト、スパーリングテスト、深部腱反射検査、筋萎縮検査といったものがあります。

自覚症状とMRI検査および神経学的テストによる異常所見を後遺障害診断書に正確かつ丁寧に記載してもらうこと

異常所見が見られた場合は、その所見と自覚症状の関連性も含めて丁寧に診断書に記載してもらってください。 交通事故による後遺障害の損害賠償に理解のない医師もおり、後遺障害診断書の記載をおざなりにされるケースも見られますので、後遺障害診断書の作成を依頼する場合には、後遺障害診断書の趣旨をよく説明して、必要十分な内容が記載されるよう注意を払う必要があります。

このように、むちうちの場合、適切な後遺障害の認定を得るためには、受診早期から検査方法や医師とのコミュニケーションにおいて注意すべき点が多くありますので、今の受診内容でよいのか不安や不満のある方は、是非早期に当事務所にご相談下さい。


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